『紙が‥ない‥』


薄曇りの空。 冬の気配。

小さな墓を囲むように大勢の黒い服をまとった人たちが、静かに祈りを捧げています。

あたりには線香のにおいが立ちこめています。

人ごみの中から一人の少女が早足で離れていきます。



墓地の外れに人目につかない様な場所を見つけると、女の子はパンツを下ろしてしゃがみ込みました。

何かを絞り出す様な音とともに、異臭がかすかに沸き立ちます。

ここ何日か便秘をもよおしていた少女は、線香の匂いに便意を刺激されました。

続けざまに何本もの茶色の物体が少女の足元に積まれてゆきます。

「早く戻らないと‥」

あせる気持ちとは裏腹に、内蔵からほとばしる流れは止まりません。

やっと便意がおさまりかけた時に、少女はもう一つの問題に気がつきました。

「あ‥ティッシュ‥‥」

普段着から着替えた時に、移し変えるのを忘れていたのです。

ティッシュはおろか、ハンカチ一枚すら持っていません。

「どうしよう、、」

あたりに何か換わりになるものがないかと見回した時です。

「どうしたの?」

後ろから男の人の心配そうな声がかかりました。



……もどる……


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