「あ…つ‥ぃ‥」
うわ言のように‥つぶやいたのは、今日これで何度目だろうか‥
そんな事すら考えるのが苦痛に思える。
暑い夏の休みの日。
粗大ゴミに混ざっていたクーラーを、何とか使えるようにして、ここ数年稼動しつづけたが、
今年の暑さにとうとうノックダウンしてしまった。
貧乏性ゆえ、仕方が無い事には違いないが、どうせクーラーが壊れるのなら、もう少しましな
暑さの日にしてくれなかっただろうか‥
風も吹かない暑い日、たとえ吹いたとしても、じめじめとした熱風だろう。
窓際に吊るした風鈴に、うらめしい視線をやる。
今はただ涼しくなる夕暮れを待つばかり。 吸血鬼にでもなったように、部屋に差し込む日光を恐れながら
部屋の柱にもたれていた。
ふと‥開けっぱなしの玄関のほうで‥砂をこするような音‥
つづいて‥ぺたぺたと床を歩く足音‥
それに続いて‥‥水に濡れて、ひやっとした感触の‥細い腕が後ろから僕の体に抱き着いた
「どうっ!びっくりしたっ!?」
玄関に上がってきた時から判っていたが、面倒臭いから反応しなかっただけだ。
珍入者の正体は、隣に住んでいる小学生の煉美だった。
どうやら学校のプールで散々泳いできた後らしい。このアパートから煉美の学校までは
歩いて5分もかからない。
煉美は着替えるのが面倒なのか、濡れたスクール水着のままだった。
(あ〜つめたい‥きもちいい‥)
「おに〜ちゃんの体ってあったかくて気持ちいい‥」
二人とも全く正反対の感想を浮かべながら、しばらくそうしていたが‥
「ねっ‥おにーちゃん。きょう、煉美、おにいちゃんのお部屋に泊めて」
「なにぃ!」
とっさに体を起こして煉美を見る。
久しぶりに‥煉美の水着姿を見たが‥‥四つん這いになっている彼女の姿勢からだろうか、
自分の部屋に水着の女の子がいるという倒錯からだろうか、
少しばかり‥‥なにか‥こう‥ムラムラっと‥‥
いけないいけない‥春先にひょんな事から煉美と一歩進んだ関係を持ってしまったばかりだ。
それ以来、自制心をもって煉美には接してきた‥が‥
後ろ手をついたまま、たじろぐ僕に向かって
「ねぇ‥ダメかな‥ねっ、いいでしょ?おにいちゃん」
四つん這いのまま、子猫がおそるおそる獲物に近付くような動作で、僕ににじり寄る。
「おに〜ぃ‥ちゃんっ!」
本当に獲物にとびかかるように‥僕の体に煉美が飛びついて来た。
おそらくプールでじゃれ合ったノリのままで、僕に飛びついたのだろうが‥
僕にとっては、それどころではない‥
仰向けになった僕の体に抱きついて、瞳をキラキラさせた煉美の顔が、無邪気に笑う。
彼女の濡れた水着の冷たさと、その下で息づいている小さな体の柔らかさが、僕の理性をほんろうする。
「ねぇ〜、いいでしょ? おかあさん、今日帰ってこないし〜」
「あぅ‥」
イヤイヤをするように、煉美が体を動かす。
丁度、彼女の体を挟むような形で、足を開いた僕の股間には…煉美のおへそが当たっている。
思わず‥おもわずに‥だ‥… 僕の下半身は煉美の息で上下する腹部に反応して… 立って…しまった…
「どどど‥どうして ウチに泊まらなきゃいけないんだ? オマエの家は隣だぞ‥」
何とか声をしぼったものの‥
「…‥あ〜‥ おにいちゃんのおちんちん‥硬くなった〜」
少し驚いたような‥僕を揶揄するような口調で煉美が指摘する。
「おにいちゃん、えっちだな〜。 でも、好きな人だと‥かたくなるんでしょ?
ねぇ、煉美の水着姿ってカワイイ?煉美の事好き?」
「ん‥ま‥ まぁ‥」
自分の腹部を、僕の硬くなりつつある股間にぴったりと当てなおし、
少しばかり上気した表情で、僕の瞳を覗き込む。
「じゃぁ‥煉美、おにいちゃんのお部屋にいてもいいよね?」
まだ濡れたままの水着のしずくが、僕の下着を濡らしてゆく。
段々と硬さを増してゆく、僕のものの反応を確かめるように、煉美が悪戯っぽく微笑む。
「煉美‥おにいちゃんと、ずっとこうしていても‥いいんだよ?」
‥その小さな頭を抱きしめて、頬擦りしたら、どんなに幸せな事だろう‥‥
‥僕の体の上で息をしている、小さな体を抱きしめられたら、どんなに甘美な事だろう‥
思わず‥そんな欲望に流されそうになる‥
僕は意志を奮い立たせ、それを断ち切った。 上半身を起こす。
「まぁ‥それも悪くないけどナ、煉美。 どうしてお兄ちゃんの部屋に泊まらなきゃいけないんだ?」
「‥鍵無くしちゃったの‥ ホらぁ‥」
煉美が僕に向かって左手をふって見せる。
左手首には‥丁度ミサンガのようなゴム紐をしていた。金具にあたる所の先にどうやら鍵が付いていた
らしい。
「‥‥って、事は‥まさか煉美、泳いでいる時にどっかやったのか?」
「‥うん‥」
少ししょんぼりした煉美を見ながら、ふいに‥鍵の事と、この暑さを何とかする方法を思い付いた。