でんでんむしとひみつ



そう‥‥あれは私がもっと小さい頃‥‥



この神社の境内で、友だちとかくれんぼをしていた時の事でした。


薮のなかでじっと息をひそめて隠れていた私の足元から、

何か小さな殻が破れるような、かすかな音が聞こえてきました。

土の中から、でんでん虫の赤ちゃんたちが湧き出るように生まれてきたのです。

そのうじゃうじゃと動くものの気持ち悪さに、思わず大きな石をたたきつけました。

石のすきまから、まだ生きているそれが、うにうにと動きながら這い出てきます。

何度も何度も石を打ち付けました。

だんだんと頭の中が真っ白になってゆきます。

断末魔に蠢くそれらの気色悪さ‥‥振り上げる石の間にきらめく粘液‥‥

体中から、汗に混じって身震いするような刺激が、下半身にむかって押し寄せてきました。

それが股間に集中した時‥‥私は生まれてはじめて体験する‥‥言い様のない電気のような快楽を覚えてしまったのです。



あれから何年たったでしょう‥‥‥

こんなふうに雨が降った夜になると、「それ」が私に呼び掛けているように、あの時の事を夢に見るのです。


‥‥夢の中で再現する殺戮のシーン

  いつに増して、強く石を叩き付けます。

  そうする事によって、より強い快楽が得られるように‥‥

  やがて首筋のあたりから沸き出すぞくぞくとした感じ。

  そして……それが背骨にそってゆっくりと降りてゆき‥‥‥


そこでいつも夢は覚めてしまうのです。


私は…‥あの‥‥たまらない刺激が忘れられずに‥‥

ふらふらと、誰もいない神社に向かっていました。









------ つづく------


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