美智ちゃん満ち充ち……‥‥2

   副題:穂香ちゃんの森で



美智ちゃんは夏休みに、一人で田舎のお婆ちゃんの家に遊びに来ていました。
遊びに来ているといっても山ばかりの土地なので、都会育ちの美智ちゃんにとっては退屈でしょうがありません。
退屈を持て余していたそんな時、穂香(すいか)ちゃんという女の子と知り合いました。

年頃も同じで活発で、男の子と見まがう程お転婆な彼女を、初めは地元の子だと思っていた美智ちゃんでしたが
同じように余所の街から来ている事が判ると、すぐに友達になれました。

穂香ちゃんは毎年この田舎に来ていて、美智ちゃんの知らない面白い遊びを沢山知っていました。
木いちごやアケビの自然の果物の不思議な美味しさ、プールの水とは違う沢の流れの心地よさ、木の蔓や花や草で出来る髪飾りや玩具の作り方、、、
全てが美智ちゃんにとっては新しい刺激で、みるみるうちにこの田舎が大好きになりました。


好きになったのはまわりの環境だけではありません。
むしろ、穂香ちゃんという、心のおけない友達が出来た事が美智ちゃんにとっての初めての喜びでした。

都会にいる時の美智ちゃんの「友達」は『新しい洋服を買ってもらった事、コンサートに行った事、習い事をしている事‥‥』なんかを嬉しそうに話す、、、
自分以外よりも優位に立つ事しか‥‥
自分の家や環境が裕福な事を自慢して、優越感を求めるライバルのような「友達」しかいませんでした。

(自分がお金を持っている訳でもないのに、、お父さんがえらい人でも、娘の自分が偉い訳でもないのに、、、)
どっちかといえばお金のない家庭にいる美智ちゃんは、ひがむように心の奥ではそう思っていました。
今度の田舎帰りも、実を言うとクラスのみんなが海外なんかに旅行するのに自分だけがどこにも行けないのが悔しかったから、、、、
両親に頼んだ故の『お父さんの田舎』への「旅行」でした。

穂香ちゃんとははじめのうちは都会の友達と喋るような会話をしました。
「私の友達に、アイドルグループの○×と知り合いで、一緒にTVの録画に立ち会った子がいるのよ」
「すごいじゃん!! で、、、、その子は○×と一緒にTVとかに出たりしてるの?」
「ううん、、、、全然そうゆんじゃないんだけど。。。マネージャーなんかと知り合いなだけで、、」
「な〜んだ。じゃあ、ぜんぜん関係ないじゃん。
 録画見ているだけならTVで見るのとかわんないのに‥‥でも、、、、その子はよっぽど自慢しかったんだネ」

そんな彼女の受け答えに初めは少し「ムッ」としましたが、考えてみれば穂香ちゃんの言う通りです。
クラスの中で、話題を合わせる為に我慢していた自分が何だか恥ずかしくなっていました。

男の子っぽくて、、元気で、、シンが強い彼女。
何か頼れるお兄ちゃんが出来たみたいで、、、
いつしか美智ちゃんは、自分も穂香ちゃんみたいになれたら、どんなに心が『すかっ』とするか‥‥憧れのようなものを感じていました。




…… 続く ……


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